下部消化管内視鏡は一般的に大腸カメラと呼ばれることが多く、大腸内視鏡といわれることもあります。
回腸の末端から大腸(結腸、直腸)の内部を観察することができ、がんやポリープ、腸の炎症や潰瘍などの病変を発見するのに適した医療検査機器です。
上部消化管内視鏡と機器の構造は同じですが、大腸カメラの場合は肛門からスコープを挿入していきます。
挿入に関してですが、腸は曲がりくねった構造であり、さらに逆流する形での挿入となるので、なかなか容易ではありません。
さらに挿入時は空気も一緒に入ってしまいます。
これが、腹痛やお腹のハリなどの症状を引き起こし、できるだけこのような症状を出にくくするために腸管に吸収しやすい炭酸ガスを内視鏡挿入時に用いることも行っています。
当院では上記のような症状に関して、できるだけ検査時の苦しさを軽減できるよう鎮静剤の投与も行っております。
これによって、検査中は意識が薄らいだ状態(うつらうつら)となるので、あまり苦しい思いをしなくて済む状態にしていきます。
検査中にポリープ発見、
すぐに除去可能
また大腸カメラによる検査では、腸内にポリープが見つかった際、その場で除去可能と医師が判断した場合は、内視鏡で取り除くこともあります。
内容としては、スネアと呼ばれる金属の輪っか状の器具を使用してポリープの茎を締め上げて(スネアに)電流を流して切除するポリペクトミー、平面状の病変の粘膜下層に液体を注入し、患部を盛り上げた状態にしてからスネアを引っかけて電流を流して切除していく内視鏡的粘膜切除術(EMR)などが行われます。
これらの治療のことを日帰り手術というのですが、当院でも行っております。
なお内視鏡でのポリープ除去が困難という場合は、当院と連携している病院を紹介させていただきます。
40歳を過ぎたら
大腸がん検診を
大腸がんは、がんの中でも罹患率の高い病気であり、40歳を過ぎたあたりから増加し始め、50代から急激に増加していきます。
発症初期で発見できれば、予後は良いとされていますが、自覚症状が出にくいので病状を知らず知らずのうちに進行させてしまうことも少なくありません。
早い時期で見つけるための検査としては、便潜血検査(2日分)や大腸カメラ検査などがあります。
各自治体では、40歳以上から大腸がん検査が行われます。
これまで大腸に何も症状がないという方についても、年を経るごとに罹患率は上昇していきますので、上記年齢に達した際は定期的に検査を受けられることをおすすめします。
大腸カメラ検査を
受けた方が良いとされる方
- 便潜血検査で陽性の判定を受けた
- 血便が出ていたり、下血の症状がみられたりしている
- 便秘や下痢等の便通異常、お腹のハリなどの症状が慢性的に続いている
- ご家族に大腸がんや大腸ポリープに罹患している方がいる
- 貧血がよくみられるが原因が不明
- 40歳を過ぎている
大腸カメラ検査で
発見されやすい病気
大腸がん、大腸ポリープ、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)、感染性腸炎、大腸憩室症、大腸粘膜下腫瘍 など
大腸カメラの費用
- 大腸カメラのみ
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- 1割負担
- 約 2,000~3,000円
- 3割負担
- 約 6,000~7,500円
- 大腸カメラ+生検(組織採取)
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- 1割負担
- 約 3,000~5,000円
- 3割負担
- 約 10,000~18,000円
- 大腸カメラ+ポリープ切除
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- 1割負担
- 約 7,000~13,000円
- 3割負担
- 約 20,000~40,000円
検査の流れ
検査希望~当日の朝まで
検査を希望される方は、一度外来での診察が必要となります。
診察では、過去の病歴や家族歴のほか、現在の健康状態、常用している薬などもお聞きします。
その結果、大腸カメラ検査を問題なく受けられるとなれば、日時を予約したり、感染症感染の有無を調べる血液検査を行ったりしていきます。
このほか検査時の注意点などの説明を受けることもあります。
検査前日の食事は21時までに終えてください。
とくに前日の食事については消化が良いもの(おかゆ、うどん、卵、白身魚 等)を選んでとるようにしてください。
また食物繊維を多く含む食品(海藻、きのこ類、こんにゃく 等)、みかんやキウイ等の果実も避けます。
飲み物については、水やお茶であれば制限されることはありません。
検査当日は、起床後から検査を終えるまで絶食となります。
常用薬については、事前に医師から指示されたとおりにしてください。
水やお茶等の飲み物の制限はありません。
鎮静剤を使用される場合は、検査当日のご自身の運転(車、バイク、自転車 等)は控えてください。
来院後は、腸の中を観察しやすくするため腸管洗浄液(2リットル)を飲んでいきます。
ゆっくり時間をかけながら、数回に分けて服用していきます。
その間にトイレを往復することになりますが、便の色が透明になれば検査開始の合図となります。
検査時の大まかな流れ
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- 1.検査衣に着替える
- 便の色が透明になり、検査の準備が整ったら検査衣に着替えます。
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- 2.検査台で横になる
- 検査台で左側を下にした状態で横になります。その際に鎮静剤を投与したり、腸の運動を抑制させる効果のある抗コリン薬を注射していきます。
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- 3.内視鏡の挿入、検査
- 肛門から大腸カメラを挿入していきます。その際は力を抜いた状態で検査に臨みます。
検査中は、大腸内部の様子を中心に観察します。必要であれば、病変が疑われる組織の一部を採取(生検)するほか、発見したポリープが内視鏡での切除が可能とあれば、日帰り手術を行うこともあります。
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- 4.検査終了
- 観察のみであれば、10~30分程度で終了します。検査終了後、1時間程度は院内で休憩します。その後、内視鏡が撮影した映像を見ながら医師による説明も受けられます(生検などを行った場合は結果を聞くのは後日となります)。
検査後の注意点について
- 食事に関しては検査を終えて1時間以上経過してからにしてください。その際は、食べる前に水を飲み、むせたり気分が悪くなったりしなければ、問題なく食事がとれます。
- お腹が張ることもあるので、その場合は積極的におならを出してください
- 検査当日は、ご自身の運転(車、バイク、自転車 等)による移動は控えてください
- 検査後は少量の血が便に混じることがあります
- 生検やポリープ切除を行った場合、バスタブに浸かっての入浴は数日避け、激しい運動も1週間程度は控えてください
- ポリープ切除後の食事は、消化の良いものにします。その後数日間は、高脂肪食や刺激の強い食べ物は避けます